スチールファニチャーでなく、鉄の家具のあり方を徹底的に検討した開発からこの椅子は生まれました。鉄を曲げる、鉄をつなぐ、鉄を塗る。それぞれの良いところを最大限に引き出し、細身で軽いデザインを心かけました。木の椅子では表現できない新しい佇まいに挑戦し、住宅にも普通に使える優しい椅子です。
とにかく、一度座っていただきたい!!
サイズ w 630 d740 h 740
素材  鉄
仕様  粉体塗装
工業製品の素材としては馴染みの深い鉄を扱い続けて半世紀以上、鉄のプロ集団が作りあげる家具と建材ブランドを構築中です。社長を筆頭に、とにかく考え方が若い。試すということに躊躇しない。そんなチームから生まれるアイテムはどれも硬派でメッセージの強い製品ばかりです。これまで木製家具がメインだった私は、杉山製作所との開発では毎回「新しいことに挑戦」です。暮らしにもっと鉄の道具を。

http://www.kebin.jp

 

杉山製作所の名前を初めて知ったのは随分前です。見本市で1小間のブースに鉄だけでできているテーブルを1台だけ置いたブランディングは鮮烈な記憶として残っています。
島田さんとはそれから仕事以外の接点が多くて、とくにNPO活動では現場を共にすることもあり、エネルギッシュな経営者のブランド展開も俯瞰して見させていただいていました。

2015年に「開発を手伝って欲しい」と相談を受けたときは、少し悩みました。杉山製作所としてこれまで多くのデザイナーと開発を重ねてきた実績が現れてきた時期でしたし、このタイミングで私が関わるテーマが見つかるかな?そもそも、鉄家具は経験値が浅いしな、、、、。
そんな悩みは、島田さんの「鉄で日本一座り心地のいい椅子をつくりたい!」の一言で払拭されました。はい、ボタン押されましたよ。こんな気持ちよくスイッチが入るのは久しぶりです。そして島田さんからはもう一つお題が出ました。「恊働で製品を創り上げる充実感を現場に浸透させたい!」と。はい、これもギアがあがりました。

引き受けるにあたり、こちらからもお願いが一つ。「とにかく現場の考えを明確にしたい。現場の技術を視覚化したい。」と。何ができるのかという技術の話を、言葉だけで積み上げてもリアリティがありません。まず職人の技を皆が共有できる形で残すこと。この取り組みに半年の時間をかけましたが、結果的に、この時間が何よりの開発の財産となりました。毎回職人が作り置きしてくれる小さな技術サンプルは、どれもワクワクするようなものばかり。(このサンプルはいつでも杉山製作所工場で展示してあります! ぜひ見学をお勧めします。)回を重ねると思わぬ裏技が登場したりしてワークショップが盛り上がります。社内でもいろいろな発見があったようですし、現場との対話が増えたのが何よりの成果でしょう。

実は、つくりたい椅子のイメージはこのワークショップの途中で生まれていました。でも、提案までじっくり熟成させて、半年のワークショップ後にいざ発表です。スチール家具ではない、アイアン家具。職人がつくる一品手作り家具でなく、技術者がつくるプロダクト家具への転換を込めた案です。
反応は良いですが、難関も多くありそうです。そのとき、現場から面白い意見が出ました。
「基本フレームを限界まで細くした試作も一緒につくりましょう。」
「背の部材を別の形状でも試作しましょう。」
嬉しい意見です。もちろん、やりましょう。
待望の1次試作、同じ図面から3脚の椅子が完成しました。つくる人も変えて、それぞれに挑戦の跡があります。挑戦しているから、議論が一方通行になりません。

そして1次試作から1年。現場で本当に火花を散らし、検討を重ねた自信作が生まれました。軽く、暖かい椅子です。
この取り組みを通して、工場からは多くの提案をしてもらいました。もしかしたらこの開発で一番育ったのは私かもしれません。

鉄の家具として日本一の座り心地になったか?
それは使い手からの声を待つことになります。

村澤さんのデザインする家具と鉄のモノづくりが始まるまでお会いしてから約5年が経っていました。当時杉山製作所をより深く良い会社にする為に必要なものは個々の力だけではなく、みんなが同じ意識で自信がもてる、みんなが納得できるいいモノをつくるという課題だと感じていました。
そんなとき、関の工場参観日のプロデューサーとして関わる村澤さんのモノづくり現場への想い、職人さんとの携わり方(繋がり方)を見て商品開発の本質がここにあると感じ一緒にモノづくりをさせていただくことになりました。

デザイナー村澤氏×鉄職人
開発の前に・・・お互いの仕事を知る時間を作りました。
鉄職人もデザイナーさんのお話を聞くのは初めての経験でした。
1回目はムラサワデザインの仕事についてのお話
2回目は鉄職人の仕事を知っていただく為の10センチ四方の技術サンプルを作り説明
3回目は家具製作会社への工場見学
4回目は技術サンプルを使って製品への可能性をスタッフ皆で検証
5回目に初めて開発テーマへの絞り込みを行いました

 みんなでこの想いを共有し開発がスタートしました。
テーマはみんなが本当に座りやすいと思える鉄の椅子。
6回目はデザインプレゼンを頂きいよいよ試作のスタート。
最初は材料などを変えて3種類の椅子を3人の職人が製作。形はほぼ図面通りに仕上がったものの一人一人作り方が違ったり仕上げ方が違ったり・・・

実際にみんなで座って座り心地や見た目を確認したり、製作にあたっての問題点を話し合い、試行錯誤して最終的には10型の試作を積み重ね仕上がりました。
こんなに細部までこだわり、話し合いができ、それをスタッフみんなが共有できたことが、このfeliceへの想いに繋がり、私たちが自信をもって納得して座っていただける椅子になりました。
そしてこの椅子で幸せを感じていただけたらと思います。

杉山製作所 島田 亜由美
今まで、一つの商品の開発に、全員が関わって取り組むということがなかったため、とても楽しい挑戦になりました。 情報が共有できているようでできていなかったり、同じクオリティのモノづくりができていなかったりと課題も見えてきました。 デザイナーと職人たちの関わり方を、考えさせられる良い機会を与えていただいたと思っています。 同じ社内にいて、毎日時間を共有していても、企画側が持っている商品開発にかける思いや、職人さんたちが持っている技術をお互い共有しきれていないことを改めて実感しました。 このワークショップを通して、見えてきた課題を今後の他の商品開発にも生かしていけたらと思います。 feliceチェアのデザインを初めて見せていただいたときの感想は、村澤さんの狙い通り「座ってみたい!」でした。丸棒らしい、柔らかなフォルムで、いったいどんな座り心地なんだろう? 背当たりはどうかな? と実際座ってみることがとても楽しみでした。(程よく課題になる作りにくいポイントがあったり、でもきちんと無理なく作りやすい形状に考えられているところ、丸棒らしさを生かした、包まれるような柔らかい印象のフォルムなどは、さすが村澤さん…と思いました。)

試作を重ねて、みんなで意見を出し合い、どんどん完成度が上がっていく過程も楽しむことができました。 これから、販売を開始して、目にしたお客さんたちに「座ってみたい?!!」と思ってもらえることが楽しみです。また、この先feliceがどんな商品展開をしていくのかも、とても楽しみです。

杉山製作所 小玉 温子