サイズ | 3P | w 1445 d 880 h 840 sh 400 |
1P | w 695 d 880 h 840 sh 400 | |
素材 | ブナ アッシュ ナラ メープル ウォールナット | |
ブラックチェリー パープルハート | ||
仕様 | 蜜ロウワックス仕上げ |
そこで考えた。開発が始まってからも、いろいろ考えた。
組み立て方式は、一番シンプルな「ボルトで固定する」方法にしました。ただボルトには真鍮製の特注品を使っています。組み立てることの特別感と、組み立てた後のアイコンになるように。組み立て方式を隠すということも頭をよぎりましたが、あえて目立たせる! これで、構造にはあまり無理がなくなりました。(実際構造も工夫が必要でしたが……)
そして、パーツはできるだけフラットパックできるような2次元的な解決を目指しながら、組み立て後はパーツの意識を感じさせない立体感を出すこと。これは、クッションの部分の工夫で挑戦しました。パーツを包み込むようなデザインのクッションが、木製フレームの強さを柔らかに包み込んでくれて、優しい立体感が生まれました。もちろん、この仕組みで座り心地も倍増です!
開発が進むと別の問題も発生。
通常のくみ上げてしまうデザインと違い、普段は見えない詳細も気になります。つまり、裏から見てもきれいなデザインが求められる。ノックダウンは奥が深い。
完成したデザインは随分とベーシックな佇まいですが、図面では書き表せないほどに体に馴染む、ゆったりとした、優しいソファになりました。
百聞は一座りにしかず。
見かけたら是非、座ってみてください。
で、ためしにバラバラにしてみてくださいね。
正式な名前が決まるまで「とりあえずイニシャルで呼んでいる」、というのが率直なところですが、開発が始まって約3年、もう呼び慣れて馴染んでしまったのか、だんだんと村澤さんの顔をしたソファに見えてくるから不思議です。後ろ脚と肘のジョイント、前脚から肘へのカーブ、フレームに巻き込んだようなクッション、など、細部を注意深く見ていくときっと「村澤さんだ」、を見つけることができると思います。
見て、触って、座って...と、思わず引き寄せられる魅力があります。
座面の上で胡坐をかく、床に座って座面のクッションにもたれる、など日本人ならついやってしまう「可笑しな使い方」も、自然にゆったりと受け止めてくれる、村澤さんがデザインする椅子、というか座具は、いつもそんなおおらかさでできていると感じます。
現場での村澤さんは明るく元気に、一抹の試練をふりかけます。「めんどう」や「しんどい」、正直そう思うこともあります。実はそれが出来たものの魅力につながって、作り手としても成長させていただいているのだと、いつも後から気付きます。
今回の「ノックダウン」も初めての経験でした。現場でワークショップを重ねるごとに、色々な問題や押さえるべきポイントが見えてきます。普段見えない部分まで使い手の目や手に触れるということもそのひとつ、そのために隠れてしまう部分も丁寧に加工し、手触りよく仕上げることが大切なのだと分かりました。
「なぜそうするのか?」の意味がわかったときは、作業も楽しくなり、ついつい妄想も膨らみます。
ソファが入ったぺったんこのダンボールケースを家族が部屋へ招き入れ、みんなで楽しそうに組み立てる、父ちゃんが息子の前で父権を誇示するかのように組み立てる、押し付けられたダンナさんがひとり寡黙に組み立てる、など色々なシチュエーションを思い浮かべながら、ひとり高揚してしまいます。
そうなってくると「ノックダウン」という言葉に含まれる「コストダウン」や「輸送性の良さ」といった乾いた意味合いはどこかへ飛んでいってしまい、「使う楽しさに作る楽しさを加えた製造法」、などという手前味噌な語義を勝手に作り出し、更には「ノックダウンとは、作り手と使い手を結ぶ精妙な仕掛けなのだ」と鼻息を荒げる始末です。
と、ここで冷静になって読み返してみると、ずいぶん大袈裟で独り善がりなことを書いてしまったなと思ってしまいます...。
ただ、時間をおいて目減りしたテンションで考えてみても、このソファが自分が関わらせていただいた製品の中でいくつもの発見があり、特に思い入れの強いものになっているのは確かです。
こうやって現場の言いたい放題も、「股旅放談」としておおらかに受け止めてくれる、そのことと村澤さんが考える人と道具との関係は、ひょっとして重なるのではないかと想像します。きっと村澤さんのデザインにはいつもそんな心意気が詰まっています。
もちろん「M sofa」にも。