1脚でも欲しい。そんな気持ちにさせる椅子の開発がしたかった。
ずいぶんと椅子選びは自由になっているとはいえ、やはりテーブルとセットとか、同じ椅子でそろえるとかが普通です。コーディネートとか気にしないで、少し贅沢に、座る時間を楽しめるデザインになっていると思います。
どこで使うかも、使い手にゆだねた椅子です。
サイズ チェア   w 505 d 560 h 730 sh 435
    テーブル  w 1650 d 840 h 700
    丸テーブル φ1200 h 700
素材  ブナ
仕様  オイルフィニッシュ
自社工場を中国の大連に設立して、日本だけでなくアジア全体のマーケットを視野に入れた開発を展開しているメーカー。中国、香港、台湾、韓国に、すでに販売拠点やパートナーを持っているブランドです。
野田康彦社長は自社工場のみならず、協力工場探しのためなら単身でどこまでも乗り込む行動派で、「良いものには国籍はいらない」を座右の銘とし、価格と品質のバランスが良い商品開発に取り組んでいます。

http://www.ndstyle.jp


 

 

 

大連工場での開発にも随分慣れてきました。
それでも新しいデザインを提案するときには、ほんの少しでも「挑戦」が大事です。それは工場への刺激であり、私自身の責任でもあります。

POSAの開発で考えていたことは、これまでの大連での経験をまとめることと、次に進む開発のイメージ創りでした。そして、それはNDstyle.が得意としているセット販売に少し異を唱える提案となりました。「1脚で贅沢な椅子」という考えはとくに新しくはありません。椅子の歴史を振り返れば、パーソナルチェアーとしても名作が多いことに気がつきます。日本でパーソナルチェアーがまだまだ評価されない理由の一つには、住空間がそのように計画されていないということも関係していると思うのですが、最近の家は、これまでの日本の間取り概念から変化しつつあり、充分に一人の椅子の居場所があります。新しい販売ルールにも取り組みはじめたブランドとして、私もちょうどいいタイミングの挑戦です。

技術的にはとくに難題は無かったはずです。随分と現場の対応力もあがってきているので、最初の試作を見て、あんまり変更する場所は無いな。と思いました。大きなハードルは「試作はきれいにできても、量産だと品質が落ちる。」ということの無いように、作り勝手やパーツの精度をどのように維持できるかです。そのため現場での確認は主に「接合部の詳細」になりました。木を接ぐという、家具作りの基本の反復練習です。

このデザインは、パーツとパーツはできるだけ90°で接合するようにしていますが、その取付け面は必ずしもフラットではありません。それぞれ、微妙な調整が必要となります。また、背の取付けだけは角度と曲面が同居したため、なかなか大変でした。試作でも皆でよってたかって力ずくで組み立てました。でも、これでは量産できないよね。結局この部分は量産設計担当の野村さんにおまかせ!(笑)二次試作でもまだ少し難点は残りましたが、これまでよりはスムーズにハードルを越えてきたと思います。

さあ、次の椅子ではどんな挑戦ができるだろうか。
私は主に、中国大連工場で生産するイスやソファの設計担当として村澤さんと仕事をしています。

家具メーカーにおける設計とは、デザイナーから提案のあったものを量産できるように整える仕事のことを言います。できるだけオリジナルに対して忠実に、かつ高品質・高強度・低価格を目指し、詳細図面や工場との調整をします。
以前いた会社でも家具の設計をしていましたが、正直言って外部デザイナーに対してあまりいい印象を持っていませんでした。セレブリティで気取っていて、工場なんかには見向きもしない…、なんて思い込み。

そんなイメージを完全に払拭してくれたのが村澤さん。

特長は、いい意味で落ち着きがない。
話していても表情をコロコロ変えて大きな声。
中国の工場では意気揚々と先陣を切って歩き出す。
言葉が通じない中国でもいつの間にか溶け込んでる。
こちらが行き詰って相談すると、無数のアイデアがすぐに出る。
デザイン以外の相談でも気軽に乗ってくれる。

村澤さんのおかげで私の毒気も抜かれた気がします。

そんな村澤さんと開発をするようになって早4年が経ち、PALETTA、GIARDINO、TOMOE、Unione、allegroに続いて、第6シリーズ目の開発になったPOSA。2015年7月現在、まだ開発進行中なので総括はできませんが、今のところ、あまり困ったり行き詰ったりということは起きていません。
もちろん今回もいつものように、村澤さんからの課題はありました。

なのに至って順調。

実はこれって私にとって特別嬉しいことなんです。
単純にトラブルがなくてうれしいというのももちろんありますが、もっと広い意味で充実感を感じています。村澤さんとの仕事を始めた頃は、1シリーズ立ち上げるのに数々の苦労や困難がありました。本当に本当に本当に大変なことだってありました。

それが大連工場という現場で、村澤さん・工場担当者・私と色々な協議をしながら作業を進めるという地道な開発を進めていくにつれて、トラブルの数が目に見えて減っていったのです。
これはデザイナー・製造・設計の3者がお互いに理解し合えてきているということが言えます。実際に現場に入って、現物を見ながらディスカッションするというのは、デザインにおいても製造においても設計においても、あらゆる面で大切なことです。もちろん日本にいるときにも打ち合わせはしますが、現場での打ち合わせはそれの比じゃありません。現場が中国ということもあり頻繁に行うことはできませんが、こういったコミュニケーションがいいモノづくりにつながっていくのです。

このつながりこそがモノづくりの原点なのだと、
改めて気づかせてくれた村澤さんに感謝です。

あまりPOSAについて触れることができていないような気もしますが、とても村澤さんフォルムで、個人的に気に入っているこの椅子が世に出ていくことをとても楽しみにしています。これからも村澤さんの世界を股にかけた旅に期待して締めさせていただきます。