四方山話股旅放談
桐材を使用した軽くて使い勝手のいいstep stool。引き出しを作る際に活用されているコーナロッキングという接合方法を使い、形状を台形にした事でより強固な構造となりました。
木の木目を活かし、日本古来の色をつけることでインテリアのアクセントとなる道具になりました。
重さは1.6キロで、小さな子どもが簡単に持ち運ぶことができます。
サイズ w 300 d 300 h 400
素材  桐
仕様  ウレタン塗装(セラウッド塗料)
明治40年創業の大川の老舗家具メーカー。現在は主に民芸家具などの箱モノを伝統的な工法を大事にしながら製造販売をするブランド。2015年に境木工新ブランド立ち上げを目標に開発協力をスタート、伝統技術を未来に残す仕組み創りもふまえたワークショップを継続。 5代目社長と一緒に和の精神を世界へ広げることを目標に、夢は大きく世界に通じる家具作りを模索中です。

http://www.sakaimokko.jp

 

大川は日本最大の家具産地。ここでは年に4回も産地展が開かれていて、私も関係のあるメーカーが出展する関係で年に数回は大川に行きます。でもじつは、大川のメーカーとの仕事は境木工が初めて。厳密に言えば、OEMなどの製産工場とは何度か仕事をしていますが、継続的なオリジナル開発は最初の試みとなりました。

開発で大事なこと。いつも同じことをお願いしているのですが、それは「時間」です。期間の長さだけではなく、仕事の意識を共有する時間をどれだけ濃密につくりあげるかがポイント。
工場の癖を読み取り、社長の経営思想を理解し、スタッフのやる気を途切れさせないようにする開発。言うのは簡単ですが、経験があるから何とかなる問題ではありません。いつも1歩目からスタートです。

境木工を紹介してくれたのは鹿児島のベガハウス社長の八幡さん。住宅の内装のことで相談していた境さんを、ベガハウスワークショップの際にご紹介いただきました。

民芸家具を中心に作っている工場で何ができるのか?1歩目の踏み出し方が一番悩みどころです。

工場で最初に行ったワークショップの際、職人さんにできることの技術的なサンプルをたくさんお願いしました。その時に目に留まったのが「台形の箱」。引き出しは通常四角形ですが、おもしろがって「こんなの作ってみた」と見せてくれたのです。これが、なかなか良いプロポーション。早速その場でホワイトボードにアイデアを出してゆき、このstep stoolの原型は生まれました。というか、その場で次の試作を依頼。図面は無くてホワイトボードのスケッチが指示書です。

そして次のワークショップ。出来ています! 素晴らしい。でも職人さんはあまり乗り気ではない。どうやら「作るのがとってもめんどくさい」らしいのです。最初にサンプルを見せてくれたのは皆さんですからね?と、こちらも譲歩はしません。なにより、作るのが大変だという仕事をしっかりすることこそ、オリジナリティに繋がるのです。私は「めんどう」と聞いたとき、心でガッツポーズでしたよ。

形は完成。次は別の職人の登場です。民芸家具作りで鍛えられた塗装の腕を見せてもらいます。あえて桐のナチュラルでなく、日本古来の色を表現することにしました。こちらも実は苦戦。箱のように表だけ塗装するのでは無く、裏も表も丁寧に。これも「大変です」と苦情が出ましたが、はい、頑張ってください!

現場であれこれ討論したセイジ(青磁)・グンジョウ(群青)・シュイロ(朱色)・ヤマブキ(山吹)・キハク(木白)・スミイロ(墨色)の6色は、サイズ感とも相性が良く、道具に独特の個性を与えてくれました。

結局、この製品で私は製作図面を描きませんでした(笑)
でも、これがワークショップデザインの成果とも言えます。
子どもに見せたら、理屈抜きでいろいろな使い方をしてくれました。
もちろん、色にも反応です。これからじっくり育てたい桐の道具です。

平成26年9月より村澤さんとのデザインワークショップを始め、新しいプロジェクトを進めることになりました。

始めは創業108年の境木工の技術の集積と再確認をするため、引き出しの箱づくりの技術であるロッキング加工やアリ組み工法のサンプル。塗装や面型のサンプルなどを工場で作り始めました。

色々なサンプルづくりを始める中で、工場担当者から従来の正方形や長方形の形もできるけど台形などの変形した形もできるとの話から「PRIMO」のデザインプロジェクトがスタートしました。

スツール作りは会社内でも初めての試みで、村澤さんからのデザイン案でサンプル作りがスタートしましたが、商品としてのクオリティーを求めるには強度、組み加工、塗装方法など何度も改良を重ねました

キャリアのある工場担当者も試行錯誤しながら取り組む姿は、いつにもなく楽しそうな雰囲気でした。

今回のプロジェクトは、「PRIMO」の制作の背景に境木工のものづくりに対する技術の確認や工場担当者の知識を引き出すことができたとっても素晴らしい取り組みになりました。

デザインワークショップもまだまだスタートしたばかりですが、色々なチャレンジが村澤さんのお力と会社全員の力でできればと思います。