細く、華奢でありながら美しい造形を意識しました。一つひとつのパーツが構造として意味を持ち、繊細なつくりでありながらすぐれた強度を合わせ持つ、鉄素材を活かした新しいデザンとなりました。まるでういているように見える座面が、日本古来の鼓をモティーフとする造形を際立たせています。
サイズ w 480  d 535  h 660  sh 420
素材 無垢鉄
仕様 粉体焼付塗装
サンドブラック スノーホワイト クラウドグレー
スマイルグレー
工業製品の素材としては馴染みの深い鉄を扱い続けて半世紀以上、鉄のプロ集団が作りあげる家具と建材ブランドを構築中です。社長を筆頭に、とにかく考え方が若い。試すということに躊躇しない。そんなチームから生まれるアイテムはどれも硬派でメッセージの強い製品ばかりです。これまで木製家具がメインだった私は、杉山製作所との開発では毎回「新しいことに挑戦」です。暮らしにもっと鉄の道具を。

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杉山製作所では、開発のテーマをみなで議論してからデザインが始まります。このときは「和の空間にあう鉄家具を作りたい」という投げかけがきっかけとなりました。「和」とひとことで言っても、意味するイメージは各自で違います。そこで、開発メンバー全員が自分の感じるイメージを持ち合い、協議しながら方向性を確認しました。

デザインの基本案は決まり試作がスタートしましたが、実際、このデザインほど最初の案から変更を重ねた経験はあまりありません。それほど、ワークショップが盛り上がった開発でした。

現場でデザインが変わる要因はさまざまです。意匠的な視点、技術的な視点、座り心地、提案のしやすさなど、担当のそれぞれの意見が重なりますが、全てを一度に解決はできません。キーワードに優先順位をつけて、形状を調整していきました。

その中でも、今回は素材の特性を最大限に活かすということが最後の決め手となりました。

最終試作に近いな、と思っていたワークショップの際、スタッフからさらに鋭い指摘がありました。座面の裏で椅子全体の構造を支えるフレームを、これまでに無い方法でチャレンジするというものです。私の中にあった「椅子の構造のセオリー」がリセットされた瞬間でした。

この提案のおかげで、「座面が浮いているように見える」というデザインの最大の特徴が生まれました。

気になる方は、ぜひ実物でご確認ください!

構想は固まりましたが、技術的にはハードルが高くなります。それでも、杉山製作所の製作メンバーは治具を工夫し、作り上げる手順を見直し、驚くほど完成度の高い椅子に仕上げてくれました。

開発を重ねるごとに深まる杉山製作所のチームワーク力を頼りにしながら、私も開発を楽しんでいます。
・製作チーム

feliceなどこれまで開発してきた他の椅子とちがって、 全部がつながっているので逃げ道がなく難しい製品。

全てにおいて精度が必要な製品。

治具のクオリティも必要だが、
治具はまだ満足いくところまで完成していないので、まだまだ途中。

デザインに関しては、座を支えるフレームが無いように見えるのが美しい。

鉄の良さが出ている。

・部品チーム

背のφ6の部分の本数が多いうえに精度もいるので難しい。

その部分の効率をいかに上げるかは今後の課題。

杉山製作所の椅子の中でも一番美しく、
欲しい椅子をひとつだけ選ぶならこの椅子。

・企画チーム

とてもシンプルで美しいデザインなだけに、 精度を出すのがとても難しい椅子。

一つひとつのクオリティが全体につながっていくので、
この椅子を量産できる技術力は素晴らしいことだと思います。

ワークショップを重ねて、
どんどん研ぎ澄まされていったのが印象的でした。